Pavement

「あなたが一番好きなバンドは何ですか?」と問われれば、真っ先に名前を挙げるのがこのバンド。

90年代に5枚のオリジナルアルバムと1枚の編集盤を残し、後生のバンドに多大な影響を及ぼした伝説的バンド。あのRADIOHEADもその影響を公言し、直近ではLOS CAMPESINOS!が彼らの音を共通点として集まってできたバンドだというのは有名なお話でしょう。(ちなみに、近年の日本ではmonobrightがフェイバリットバンドとして彼らの名を挙げている。)

ご存知の通り、「ローファイ」と称されるサウンドの代表格としてその名は広く知れ渡っているわけですが。(しかし、「ローファイ=PAVEMENT」という構図を安易に用いる近年の傾向は由々しき事態であり、そういった思考回路を持つライターは早々に退去していただきたい所存。)実際に彼らの音を聴いたことがある人間は近年減少の一途を辿るばかり。なので、ここらでガイドライン的なもんを一筆。

グランジ最盛期の92年に1stアルバム『SLANTED & ENCHANTED』でデビューを果たしたカリフォルニア出身バンド。

SONIC YOUTHやPIXIES、NIRVANA、DINOSAUR JRといったあたりのバンドにも近い、狂ったような半崩壊気味のディストーションギター。(くるりの岸田繁なんかよりもよっぽどスティーブ・マルクマスの弾くギターの方がド変態である。)

上手いのか下手なのか、意図的なのか致し方なしなのかよく分からないドラミング。奇を衒うことはないものの、シンプルながら素直にシンプルとは言えないベースライン。

そして、とにかくお世辞にも上手いとは言えない(IAN BROWNよりはマシだが)、しかし最高に直情的かつ人間味溢れるボーカリゼーション。

それらが合わさった時に奏でるアンサンブルは、アンサンブルと呼ぶのが憚られるほど崩壊的でありながらとてつもなく魅力的に響く。その崩壊感、不完全性という部分は、ある意味で人間そのものの不完全さを体現したかのようにも感じられ、ゆえに彼らの音は概念的な意味合いでも僕らの心をくすぐるというのが最大の魅力とも言えるだろう。

3rd以降は徐々に彼らの世界観も広がり、サウンドの多様性も増してくる。半崩壊気味のサウンドは徐々にまとまりを見せてくるが、同時に彼らのポップネスや脱力感、メロディの美しさが際立ってくる。そして、最終作『TERROR TWILIGHT』で一つの到達点を極め解散へと繋がっていく。

オリジナルアルバム5枚。そのいずれもがとてつもなく素晴らしい。おそらく全ての作品がまぎれも無い傑作だと認められているバンドは、古今東西探してもTHE BEATLES以外に見当たらない。

それくらい素晴らしい、そしてとてつもないバンドだったのです。マジで。

ということで、以下、アルバムレビューです。

 

 

1st 『SLANTED & ENCHANTED』

92年にリリースされた、記念すべきPAVEMENTの1stアルバム。現在、通常の日本盤が廃盤になっていない唯一の作品である。

PAVEMENTのキャリアを語る上で本作を最高傑作と推すアーティストや評論家も多い(が、個人的には最高傑作は次作『CROOKED RAIN』だと思っています)。オッサンドラマー、ギャリー・ヤングが在籍した唯一の作品でもある(そしてその拙いドラミングが今も多くのファンの心を捉えている)。

いやー、とにかく音質が荒い!!歌詞どおりに歌っているとは思えない部分も多々あって面白い。ほんでもって、そこで歌われていることはおそらくアメリカ批判であり、彼らの攻撃的な面を余すところ無く見せ付けている。

代表曲M-1“SUMMER BABE”から始まる本作。音質は悪いものの、その熱量がひしひしと感じられるギターサウンドには、聴く者にどデカイ一撃を打ち込むこと必死。

ディストーションギターとスティーブの声が唸るM-2“TRIGGER CUT/ WONDERED-KITE AT:17”~M-4“IN THE MOUTH A DESERT”でPAVEMENTの魔力に魅せられること確実。M-9“HERE”にはRADIOHEADの萌芽を見出すことも可能だろう。M-10~12の露骨なまでの社会批判も刺激的。

1stアルバムにして、音楽シーンに多大な影響を与えた大傑作!!!!

 

extra 『Westing(by musket and sextant)』

93年にリリースされた企画盤。アウトトラック集か、デビュー以前の音源をまとめたものなのか、その辺はよく分からないが、とにかく音が悪い!安い機材で宅録しました的な、まさにローファイと呼ぶに相応しい音質。ちなみに現在は輸入盤しかリリースされておらず、歌詞は無いです。

初期PAVEMENTのグランジ寄りな楽曲が中心。最近だったらTHE WHITE STRIPESやTHE KILLSあたりとか(?)そういうのが好きな方は是非。

でもまぁ、これはこれで乙なもんだけどね。僕はスゲー好きだし。実際、この作品が好きな人ってのも少なくない気がします。

 

2nd 『CROOKED RAIN』

最強!!私的、生涯ベストアルバム。前作からメロディ面で圧倒的な進化を遂げ、とにかく名曲のオンパレード。

94年のリリースで、一応現在は二枚組みのデラックス盤、日本仕様がリリースされている。本作は紛れも無い大傑作なので、迷うことなく購入することをお薦めします。

M-1“SILENT KIT”からぶっ飛びまくりである。ピート・ドハーティに勝るとも劣らないイカレっぷりである。THE LIBERTINESの2ndを初めて聴いた時は誰もが笑ったが、本作は笑い出す以前に吹っ飛ばされる。

ファニーなコーラスから始まるM-4“CUT YOUR HAIR”。シニカルな視点で音楽シーンを捉え、終盤では感情爆発のボーカルを響かせるその圧倒感は至福。

名曲M-6“UNFAIR”!!古今東西、この曲以上に感情むき出しの楽曲が存在しただろうか。否。この曲の半狂乱、破綻寸前の疾走感は掛け値無しに最高である。

極美メロのM-7“GOLD SOUNZ”。Cajun Dance Partyの“AMYLASE”が何ぼのものだと言うのか。僕は未だこの曲以上にテンションが上がる曲に出会っていない。

フォーキーサウンド、ミドルスローテンポの極美メロ、M-9“RANGE LIFE”。放浪暮らしを望む、すなわち「僕らが旅に出る理由」である。“ハイウェイ”の元ネタか!?などと一瞬頭の中に浮かんだが、そんなのはどうでもよろしい。とにかく素敵すぎて涙が出そうになる。

その他諸々。とにかくバリエーションに富み、いたるところで美しいメロディと破綻寸前の演奏とスティーヴの叫びが光を放つ、ロックの歴史上、他に類を見ない孤高の作品。

 

3rd 『WOWEE ZOWEE』

ゆる~い。全作中、最もゆるい作品である。とにかく力が抜けていて良い(他のバンドからしたら抜きすぎなのだろうが)。

今日、こんな作品をリリースできるアーティストはもはや存在しないのではないだろうか。95年リリースの3rdアルバム。ちなみに本作も二枚組みデラックス盤が出ていて、日本仕様もあり。

過去二作よりは断然演奏がまとまっている。轟音ギターは鳴りを潜め、自身の音楽性の幅を広げようとする試みが随所に見られるようになる。しかし完成品としての精度は未だ低く、そのくせ爽快感と狂騒感が入り混じっていて圧倒的な独創性を生み出している。

アコースティックギターと鍵盤を使った物憂げなM-1“WE DANCE”で幕を開ける本作。M-2“RATTLED BY THE RUSH”~M-5“GROUNDED”がゆるゆるで気持ち良すぎ。一転M-6“SERPENTINE PAD”ではいきなり轟音雄叫びだったり。M-10“BEST FRIEND’S ARM”のような勢い重視、阿呆みたいな楽曲もあり。M-11“GRAVE ARCHITECTURE”やM-12“AT&T”も名曲。

いやー、幸福。こういう作品って滅多に無い。この緩さの中で一生泳ぎ続けたい。

 

4th 『BRIGHTEN THE CORNERS』

97年リリースの4thアルバム。彼らのキャリアの中ではあまりスポットの当たらない作品ではあるが、個人的にはとても好きな一作。

2ndの美メロを取り戻しつつ、作品としてのクオリティも上がった(反比例してPAVEMENTとしてのクオリティは下がったかも?)。ミドル~スローテンポのサウンドはWEEZER的なパワーポップに少し寄った印象。激情型のボーカルや少々鳴りを潜め、全体的に力が抜けたというよりも精神的に落ち着いた感じ。しかし、スティーブらしい歌いまわしと素直になれない捻くれギターは相変わらず。

『WOWEE ZOWEE』から『TERROR TWILIGHT』へと繋がっていく過程的な面も見せながらやはりどこか異色感が残る作品でもある。どことなく夕暮れ時の切なさを感じさせるような情感がまた良い。

M-1“STEREO”では轟音を響かせ、PAVEMENTらしいイカれっぷりを疲労。M-2“SHADY LANE”の虚ろ気なメロディラインも良いし、M-4“DATE WITH IKEA”はPAVEMENTのキャリア中屈指の名曲!!M-7“EMBASSY ROW”の中盤からの展開はかっこよし。

といった具合に、あまりスポットが当たらないものの秀逸な楽曲は多く、非常に気持ちよい作品。そして同時に、サウンドと共にキャリアも終わりに近づきつつある斜陽を感じさせる(特に後半)一枚でもある。

 

5th 『TERROR TWILIGHT』

RADIOHEADのプロデューサーとしても知られるナイジェル・ゴッドリッジを起用したPAVEMENT最後のオリジナルアルバム。最後にこんな傑作を生み出してしまうもんだから本当に罪深い!!実際、本作を彼らの最高傑作として推す声も多い。(しかし現在は輸入盤のみ!なんとかしてくれレコード会社!!)

空間系のエフェクトやプログラミングをこれまで以上に多用したサウンド。『BRIGHTEN THE CORNERS』の夕暮れ感からさらに時間が進んで、夜の空気感を醸し出す一枚。

全作品中最も完成度が高く、構成や音色、歌声など全てが美しい。メランコリックでありながら柔らかく優しい音楽が溢れる。スティーブ・マルクマスという男がいかに希有な才能溢れたメロディメイカーであったかを示す作品だとも言えるだろう。

M-1“SPIT ON A STRANGER”ゆったりと流れる、初夏の暖かい夜気のような名曲M-5“MAJOR LEAGUES”。泣くなと歌われても涙が出てしまうほどの美しさのM-7“ANN DON’T CRY”。アコギ弾き語りの美メロから始まりながら、やっぱり偏屈さを隠せぬM-8“BILLIE”。ポップでファニーでどこか切ない最終曲M-11“Carrot Rope”。

などなど、最後まで素晴らしい音楽を響かせる。

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