GRAPEVINE

【GRAPEVINE】
98年組と言うと、くるりやSUPERCARらの名が真っ先に挙がるわけですが。彼らも列記とした98年デビュー組なのです。

各自のポジションは固定だが、メンバー全員が作曲するスタイルを取り、各々が非常に質の高い楽曲を生み出すことで知られている。

ルーツは60~70年代のロックンロール、ソウル、R&B、ファンクといったあたりを核にしながら、90年代初期~中期にかけてのロックシーンとも共鳴するサウンド志向性を示す。そういった系譜をしっかりと踏襲したサウンドを生み出す。特にROLLING STONESらの影響が色濃いと考えられ、非常に卓越したギターロックを生み出し続けているバンドと言える。

それゆえか、ギターアレンジは非常に卓越し、洗練されたものとなっており、ギターバンドとしての能力の高さをしっかりと見せつけている。プログラミングにはほとんど頼らず、デビューから現在に至るまでギター×2、ベース、ドラム、キーボードのスタイルを貫いており、非常に高いバンドとしての有機性を提示し続けている。

現時点で9枚のオリジナルアルバムがリリースされているが、アルバム毎の特徴を述べるのがなかなか困難なバンドである。作品ごとにクオリティのばらつきはあるものの、楽曲の基本的スタイルは不変だと言える。一方でその不変性にあって、未だ求心力を失わずにいられることを考えれば、その実力の程が窺い知れるだろう。

一般的に、ボーカル田中のルックスもあり女性人気が高く、またMr.Childrenにも通じるポピュラリティを孕んでいることからも、音楽愛好家からは過小評価されているキライがある気がする。しかし、正統派の「ギターロック」という観点からすれば、間違い無くここ10年間の日本において最も優れた作品を生み出し続けてきたバンドであり、本来であれば音楽愛好家らにもっと評価されるべきバンドだと思う。

個人的には初期三枚、5th、9thあたりがお気に入り。以下、全作レビュー。

★1st 『退屈の花』★ 9.3 / 8.0
音質は荒いし、演奏もまだまたルーズさを残しているものの、全体的に巧みなアレンジが施されており、非常に良質なサウンドを響かせている1stアルバム、1998年作品。彼らの最高傑作と言ってもいいんじゃないだろうか、と思うほど楽曲は粒揃いでキャッチーかつ成熟している。

概ねミドルテンポ、シンプルな構成のギターポップロック。曲によってキーボードなどが入るものもあるが、ほぼ純粋な4ピースで奏でられるサウンド。

西原誠が作曲したM-3,5,6,8あたりに特に表れてる気がするんだけど、往々にして60年代のロックンロールからの影響を感じさせる。多分、THE BEATLESとJIMI HENDRIXの影響が結構でかい。あと、サイケデリックミュージックへの憧憬も垣間見られる。

メロディーも非常に良いのだけど、やはり特筆すべきはそのサウンド面か。やり口はシンプル、バーンと行くとこはバーンと行って、シュッとするところはシュッとする。しかし、それが露骨になりすぎないのは、巧みなアレンジ力が彼らに備わっている証拠か。

M-1“鳥”、M-2“君を待つ間”と序盤からメロディーにフックがあってギターの絡みも面白い。M-3“永遠の隙間”はストリングス、キーボードを組み込んだビートルズ調。終盤にサイケデリック笑。ゆったりとしたテンポで、彼ららしい泣きのメロディとギターサウンドが響き渡る珠玉M-4“遠くの君へ”。三拍子のリズム感が良いM-5“6/8”。M-6“涙と身体”なんておそらくデモ版とか甘々だったんだろうな、って思うんだけど、そのアレンジによって凄くドラマチックな楽曲に仕上がってる。

(M-2,4,10)

★2nd 『Lifetime』★ 9.5 /
1999年リリースの2nd。ほんで、僕個人としては、日本のロックを聴き始める初期段階でかなり大きな影響を受けた作品でもあります。

1stが60年代のルーツロックを起点にしているのに対し、本作は80年代後半から90年代にかけてのグランジ~オルタナの流れも踏襲したサウンドになっている。ほんで、一気に音が良くなると同時に亀井亮のドラムが急に力強くなる。キーボードが用いられる割合が高くなり、またギターの音が重層的になる。

もしかするとオーバープロデュース?って感じもするんだけど、どうなんだろう。前作と比べると明らかに重層的になっていて音に厚みが出る一方、二本のギターとベース&ドラムによって奏でられる有機的なアレンジが少々薄れた感もあり。前作の良い意味でのルーズさが薄れ、攻撃性を備えた鋭角的サウンドを鳴らす楽曲も多い、野心的な作品でもある。

言わずと知れた彼らの代表曲M-4“光について”も収録された本作。この曲を今聴くと、かなり重層的なサウンドになっていて、逆にこれは彼らの望むべくしてなった姿なのだろうか、という疑念すら浮かんでくる楽曲でもある。しかしながら、やはり名曲!!

後方でキーボードやコーラスやらが鳴り、空間的な広がりを持たせたサウンドと、つんのめるようなメロディが絡む秀曲M-2“スロウ”。M-3“SUN”では音の圧力で押すスタイルを印象付ける。DOORSの影響を感じさせるM-6“Lifework”。情動赴くままギターを掻き鳴らす三拍子のロックンロールブルースM-7“25”が実はすごく彼ららしいサウンドだな、とも思う。M-8“青い魚”のメロディーは前作を最も素直に継承したもの。スピード感と重厚感のあるM-10“白日”は本作中屈指の名曲。M-12“望みの彼方”もまた名曲!!泣きのメロディとギターがたまらん。

(M-2,3,4,7,10,12)

★3rd 『Here』★ 8.2 /
若さゆえのエッジーな感覚が徐々に抜け、サウンドにも徐々にその柔らかさが滲みはじめる三枚目、2000年。高音域抑え目のディストーションギターを前面に押し出し、小細工なしのストレート勝負で挑んだ作品。ほんでもって、個人的には僕が初めて手にとったGRAPEVINEのアルバム(だった気がする…)。

やはりM-3“Reverb”、M-10“羽根”、M-11“here”が白眉。また、アコースティックギターの響きとストリングスを用いた大きくゆったりと羽ばたくようなM-5“ダイヤグラム”や、1stの頃のメロディを残しつつキーボードの響きが印象に残るM-7“ポートレート”のように、秀曲

それまでの作品と比較すると、若干メロディにフックが無くなったかな。全体的に音に余裕を感じさせる。ポジティブさを感じさせるシンプルなアレンジゆえ、聴きやすい作品ではあるものの彼ららしい魅力が若干薄い気もする。

(M-2,10,11)

★4th 『Circulator』★ 6.9 /
個人的に、GRAPEVINEの作品を買ったのはこれが最初で最後という2001年リリースの4th。そして、このアルバムを買った時の応募特典に当選し、彼らのライブを初めて観ることになったという思い出もあり。

しかしまぁ、個人的にはあまり好きな作品だとは言えない。前作でアレンジがシンプルすぎて彼ららしい有機性が感じられなかったことへの揺り戻しか、4ピースバンドとしての有機的かつ引き締まったサウンドにはなっている。反面、スケールの大きさを感じさせる楽曲が並ぶものの、そのスケール感ゆえ全体的にメロディが間延びしてしまってる感じがあって、彼ら特有のフックのあるメロディがさらに薄まってしまった感覚。まるでコシの無くなった茹で過ぎの麺を食べているよう。

エッジの効いた攻撃的な音を鳴らすM-5“lamb”や、美しいメロディラインとサウンドスケープが心地良いM-6“Our Song”あたりは素晴らしい。M-7“(All the young) Yellow”ではSLY & THE FAMILY STONEあたりのファンクっぽさも感じさせる。

どちらかと言うとサウンド面に重点を置いた作品か。セルアウトしようとしたようなスケール感溢れる楽曲が多いが、メロディが付いて来てない感じがする。

(M-5,6)

★5th 『another sky』★ 8.0 /
2002年リリースの五枚目。前作が試行錯誤の末に考えすぎた感があり、ぎこちないアレンジが多かったように思う。しかし本作ではアレンジが非常にバランスが湯億、特にギターの絡みあいなどは絶妙であり、非常に有機的なサウンドを生み出している。また、前作では雑多でとっ散らかった印象が目立ったが、本作ではアルバム全体としての流れも非常に良く、良質のサウンドを展開している。

鋭角なギターサウンドの高速トラックM-2“ドリフト160(改)”。1stを想起させるメロディラインをもったアップライドなギターポップM-3“BLUE BACK”。バインお得意の美メロナンバーM-4“それでも”から、ゆったりとした三拍子のメランコリックチューンM-5“Colors”へと続く。ギターの音響によって空間的な広がりを創出し、60年代のサイケデリックロックを想起させるM-6“Tinydogs”。早めのギターロックサウンドと、ほんの少し哀しげなメロディが非常に美しいM-10“Sundown and hightide”は特に最高!!M-11“アナザーワールド”のサビへの導入部とか痺れますね!!そして最終曲M-12“ふたり”のキーボードのループと美しいメロディによる浮遊感がたまらなく素敵です。ということで、ラスト三曲の出来が素晴らしい!!

駄作と言われてもしょうがない前作を乗り越え、本作ではしっかりと彼ららしい質の高い楽曲を提示している。GRAPEVINE、中期における最高傑作と言ってもよいのでは。

(M-3,10,11,12)

★6th 『イデアの水槽』★
静と動が共存する2003年リリース作。アルバム全体としての統一感が希薄な感があるが、楽曲自体は粒揃い。

重厚すぎない鋭角的なサウンドはその鋭さを増し、同時に音楽的な幅の広さをも提示する作品。演奏面ではドラムがシャープになった印象も受ける。

不穏なイントロからヘヴィーロック継承の激情型サウンドを展開するM-1“豚の皿”。エッジの効いた高速ギターサウンド鳴らすM-2“シスター”。M-4“ミスフライハイ”も同様、これまた高速の切れ味鋭い楽曲になっている。また、ピアノを主体にした寂しげで感傷的なスローナンバーM-6“SEA”や、ソウルやR&Bといった彼らのルーツを垣間見せるM-5“11%MISTAKE”やM-8“Suffer The Child”といった楽曲もある。一方でM-9“アンチハレルヤ”以降の楽曲に備わったポップネスも彼ららしい音楽への寛容さを表したよう。そして、M-3“ぼくらなら”やM-10“会いにいく”のようにミドルテンポの美しいメロディを響かせる楽曲や、スケール感のある轟音響かせるM-7“Good Bye my world”あたりは秀逸。

(M-3,9,10,)

★7th 『deracine』★
若干前作よりも刺が取れたかな、という印象を抱かせる。音の感触に柔らか味が加わった。各楽曲の印象は薄れたが、徐々に『Sing』へと繋がる予感と変化を感じさせる。

また、特にアルバム後半では彼らのルーツである60年代ロックンロールへの回帰と、それに伴う初期作品に近しいメロディとアレンジが施された作品。特にM-5“REW”のメロディは初期を想起させ、M-8“それを魔法と呼ぶのなら”のフックの効いた美しいメロディは癒しを与えてくれる。爽やかなサウンドとキャッチーなメロディ響くM-6“放浪フリーク”。M-7“KINGDOM COME”もろLED ZEPPELIN。フォーキーなサウンドを響かせる最終曲M-10“スカイライン”も乙。

★8th 『From a smalltown』★ 6.6 /
ライブ栄えしそうなM-1“FLY”で幕を開ける本作。続くM-2“ランチェロ’58”やM-3“スレドニ・ヴァシュター”も同様に、唸り泣くハードなギターサウンドを中心に、非常に肉体的な力強さを感じさせるトラックに仕上がっている。ピアノの穏やかな響きとアコースティックギターや空間系のエフェクトで始まりを告げ、徐々に高度を上げていくM-4“smalltown, superhero”は、もろにMr.Childrenという感じもするがご愛嬌。M-6“ママ”のような静かなサイケデリックトラックや、ソウルの遺伝子を組み込んだM-8“インダストリアル”といった楽曲も含まれるが、全体としては非常にハードでソリッドなしあがりになっている。M-9“指先”ではGRAPEVINEらしい力強い音の広がりと、美しいメロディを聴かせてくれる。

これまでのキャリアにおいて積み重ねてきた彼らの自力をしっかりと見せ付ける。全作中、最も力強い一枚。

★9th 『Sing』★ 8.3 / 7.5
一音目からいきなり驚かされた。音が圧倒的に鮮やかで、とにかく田中和将の歌声が美しい。田中和将ってこんなに色っぽいボーカルだったか?こんなに伸びる声だったか?てか、そもそもメロディラインが洗練されすぎだろ。日本の音楽でこれほどのものは久々、鳥肌もんですね。

元々アレンジの上手いバンドではあったけど、そこにメロディや言葉、そして歌声がしっかりと乗って、素晴らしいアンサンブルを形成する珠玉の作。

ゆったりとしたアコースティックギターの音色とリバーブのかかったキーボードの幻想的な響きが心地良く流れ込むM-1“Sing”から始まる本作。RADIOHEADを想起させる伸びやかな歌声とクリーントーンギター、そして芯の太いベースラインが一体となったM-2“CORE”は白眉!!M-3“Glare”もまた鳥肌もんの名曲で、過剰なカタルシスには陥らず、適度なバランス感覚を保ちつつ解放感を誘う構成が素晴らしい。M-4“ジュブナイル”での二本のギターの絡みも非常に洗練されていて、ロックアンサンブルとしての完成度も高く、メロディにもフックがあってとにかく心を掴まれる。ピアノの響きと後半にかけての情感の高まりが掻き乱すような熱量を生むM-5“Two”。光に包まれた鮮やかな情景を映し出すかのような音像を描くM-6“また始まるために”や、メランコリックな影を少し残しつつもスケール感のあるゆったりと力強いサウンドスケープを描くM-7“鏡”も美しい。M-8“女たち”はファニー&ポップかつブルージーな感触で、USインディーポップっぽいサウンドを鳴らす。ソリッドでエッジの立ったロックサウンドM-9“フラニーと同意”はそれまでの彼らの楽曲とは一味違う巧妙なサウンドプロダクションでかっこいい。素直にメロディの良さを引き立てたM-10“スラップスティック”も巧みだし、続くM-11“越える”はキャッチーで壮大でなおかつアレンジも抜群に良い名曲。シンプルながらも、流麗なメロディラインとメランコリックかつ荒々しくも繊細なサウンドが圧巻のM-12“Wants”。

徹頭徹尾、とにかく素晴らしい!!これぞデビュー11年目にして打ち立てた金字塔!!絶賛。

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