『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦

こんなにも楽しい小説があるなんて。この素晴らしい物語とのめぐり合いに大きな感謝を捧げなくてはならない。

心が温かくなる感覚。優しく、幸福な温かさに包み込まれるような小説である。まさしく多幸感と呼ぶにふさわしいこの読後感は、本を読む上での至上の喜びと言って過ぎることはないだろう。

こんなにも本を読み進めていく上で楽しさを感じたことは久しくなかった。遡ってみれば、二回生のときに読んだ村上龍の『69』以来か。卓越した発想とユーモアに溢れ、独特の語り口で紡がれる幻想的な物語。その内容は、ファンタジーともコメディともロマンスともとらえられる。

少し変わった考え方をする可憐な女の子と、冴えない四半世紀を過ごしてきた男子が、互いの視点から物語を描き出していく。その物語は極めて奇妙で愉快極まりないものであるのだが。

適度に伏線を張りながら、その奇妙で愉快な世界観の中に読者を引き込んでいく力は賞賛する以外に方法は無く。そして華麗に物語を収束させていきながら、心にホッと温かい風を吹き込んだり、時に涙を誘うような安堵感を与えたり、ほのかな恋心の行く末にハラハラさせられたり、僕の心をガッチリと鷲掴みにしてしまう、楽しい楽しいお話。ちなみに、「面白い」ではなく「楽しい」というのが重要。

僕はこの二人の物語をもっともっと読みたい。そう純粋に心の奥底から思ってしまう。

本書の構成は四部の短編が連なった形。一編あたり70~80頁で、さらりと読みやすい。というか、読まずにはいられなくなる面白さ。随所に格言めいたものが織り込まれたり、はたまた恋する男子の心理を巧みに描写していたり。なかなか小業も利いていて良い。

というわけで、まぁ、絶賛ですよ。大絶賛です。

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『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦
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