『村上海賊の娘』和田竜

2014年の本屋大賞も受賞した本作。史実に基づき、16世紀・戦国時代の大坂本願寺を巡る村上海賊と織田信長方の戦いを描いた作品。

なかなかボリューミーではあるが、非常に読み易く面白い作品だった。

海戦を描いたエンタテイメントである一方で、登場人物それぞれの心理の変化や当時代の風土や気概たるものが精緻に描かれるがゆえ、感情移入できる作品にもなっている。物語自体は村上家の姫たる村上景を中心に描かれるが、その周りを彩る、眞鍋七五三兵衛や弟・村上景親ほか、個の立ったある種の群像劇のようでもある。こと眞鍋七五三兵衛はもう一人の主役として、その豪気さは読み手としてもとても魅力的に映り、いっそ彼を主役として描いたほうがドラマチックな物語になったのではないかと思うほどである。

ちょこちょこと史実を交えながら語られる本作の書き口は絶妙。戦国の時代背景もさることながら、戦場における描写は、土地勘無くともその一関係を容易に思い描けるよう、下手な書き口が無い点も良い。一方で、小難しい登場人物の名も、それぞれのキャラ立ちがあるがゆえ、迷うことなく読み進められるという点で、作家としての力量は流石と言うべきか。

二巻に渡る長編ということもあり、半ば中だるみでもするかと思いつつ、確かに上/下の繋ぎ目あたりに若干はあったものの、全体を通して緊張感のある作品となっている。淡々とし過ぎること無く、しかし無駄に筆圧強く描かれる暑苦しさもない。

非常に面白い作品であった。

序盤の門徒を大阪へと誘い、七五三兵衛の屋敷まで行くにあたっての景の豪気さ、快活さ。戦場において、源爺の死に様を目の当たりにし、戦に描いていた夢が打ちひしがれ、しおれる様。能島へと戻り、着道楽として女らしさを出す景。兵糧入れをすることが無いと、父武吉から伝えられた後、戦場へと赴く様。最後の最後まで戦い抜く様と、一連の流れで、一人の人間として筋を通し、成長していく様子には一種の畏敬すら抱くほど。

一方で七五三兵衛の「オモロイやっちゃ」と、他社の愚行すら笑い飛ばす豪気さ、息子・次郎に対し、最後の最後まで強い男であることを見せつけ、決して湿っぽくならない様には、男子たるもの憧れを抱かずにはいられないだろう。

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『村上海賊の娘』和田竜
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