『キャプテンサンダーボルト』阿部和重/伊坂幸太郎

『キャプテンサンダーボルト』読了。普通に面白いエンタテイメント小説だった。

阿部和重、伊坂幸太郎の共に割と好きな作家なので、その共作がどのようになるのか楽しみにしていた。結果としては、とても良い塩梅で両社の色が混じり合った佳作となっていると思う。

どちらかと言えば伊坂幸太郎の色が強いと感じた。特にストーリーの部分については『ゴールデンスランバー』を思い出させるような展開、伏線の貼り方で伊坂らしさが強く出ていると思う。一方で、阿部和重の作品と言われて読むと、「随分優しい作風になったな」という印象を感じるだろうが、読み口としては随所に阿部和重らしいダーティさが覗く。

結果、相互に持ち得ない部分を補完し合った作品だと思うし、一つの作品として破綻無く成立した快作である。

ストーリー自体は、正直言ってしまえば、伏線の巧妙さに欠けるのも事実。途中で「これが伏線になるんだろうな」というシーンが隠しきれていない。それはピッチングマシーンの回想であり、パチンコ屋のチラシなり、投下された戦時のビラなりと、若干の露骨感が否めない。とは言え、それ自体が作品の面白さを損なうものでは一切無いし、全体としては非常に良く組み立てられていると思う。

無駄に感傷に浸ることも無ければ、内面を抉るような描写も無く、単純に痛快なロードムービーを観るかのようで潔く心地良い。登場人物たる相葉と井ノ原の会話に滲む友情のあり方も、変に気張り飾ることなく、すんなりと描ける。

「あるけど、ない」という村上病の真実を追うと同時に、子供の頃に描いたヒーロー像(つまり虚像)を追うという、壮大でありながらも半ば滑稽とも取れる構図にしたのも、ある意味二人の作家の悪だくみのようにも思える。つまるところ、「中身が詰まった話ではなく、ただ夢の中で転げまわるような冒険譚」を描いたところに、二人の作家としての遊び心が詰まった作品だと思う。怪人vsヒーロー、陰謀vs正義の味方、的な単純構造の中での秀逸な遊びとして、とても良い作品であり、爽快である。

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『キャプテンサンダーボルト』阿部和重/伊坂幸太郎
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3

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